地下室のヘンな穴 / 中年夫婦が念願叶って手に入れた新居には、不思議な穴があった。そこを通ると現実で12時間が経ち肉体は3日分若返るという。若返りたい妻は何度も繰り返すのだが……。フランスで大ヒットした怪作。

「ディアスキン 鹿皮の殺人鬼」の奇才Q・デュピュー監督による、フランス・ベルギー合作の奇妙なコメディ。その穴を通っただけで【12時間進んで、肉体は3日若返る】という不思議な穴をテーマに、若さを求める人間の滑稽さをとある夫婦を中心に描く。レア・ドリュッケール主演。
アランとマリーの夫婦は新居を探していたが、紹介されたとある家には地下室と不思議な穴があった。そこを通ると信じられないことが起きると言われ実際に体感した二人は、面白そうだからと購入に踏み切る。その穴を下ると何故か家の中の天井から降りてくる形になり、現実世界は12時間が経過、さらに肉体は3日分若返るというのだ。やがてマリーは躍起になって繰り返し穴を通り続けるようになり……。
アラン・シャバ、ブノワ・マジメル、アナイス・ドゥムースティエら共演。
あらすじ
念願の新居を探し求めて、郊外にある素敵な一軒家を下見に訪れた、アランとマリーの中年夫婦。購入するかどうか2人が迷っていると、案内役の不動産業者が思いがけないことを言いだす。実はこの家の地下室には不思議な穴があって、そこをくぐると12時間進んで、3日若返るんですよ、と。半信半疑ながらも、2人は思い切ってその家を購入。妻のマリーは若返りたい一心から、暇を見つけては穴をくぐることを繰り返すのだが……。(WOWOW番組案内より)


タイトルからもぷんぷん匂ってくるように「世にも奇妙な物語」的な設定、ストーリー。トンネルとかドアを通じると別世界っていう設定はたまに見ますが、12時間経つが、若返るっていうほとんどメリットしかないような不思議な穴ですからね。話がうますぎてバッドエンドの予感しかしない。

記事タイトルや上記あらすじでも触れている通り、基本的に夫婦二人でも利用するのは妻マリーのみでアランは好奇心こそ示してたものの積極的ではありません。そこがあえて対照的にしていて面白いし全体的なテーマとしてはやっぱり「若さへの執着」だったかなと思います。もしもやればやるほど若返れますって言われたら延々とやり続けてしまう気持ちもわかるんですけど、欲に終わりがないのは怖い。
それでもアランはずっとそばにいたというのが泣けるポイントですね。先に言ってしまうとほんと親子くらいまでいくんですが、それでも二人は同じ家に暮らし続けていく。若い恋人と共に出ていくエンドとかやめてくれよーって怖かったです。問題はマリーの精神が蝕まれていくことの方だけど。

スタート地点は「年齢が理由で挑戦できなかったこと」の解決策として不思議な穴による若返りだったのにそれがどんどんエスカレートしてしまう。モデルとして活躍しても、宣材写真よりもさらに若くなってしまって矛盾が生まれてしまうほどだから相当ですよね。癇癪を起こすのはその「若返りさえすれば」なんでも望みが叶うと勘違いからくるのか。僕自身たとえば体力の衰えとか咄嗟にハリウッド俳優女優の名前が出てこなかったりして落ち込んだりしますが(笑)実は若さだけ取り戻せば全部幸せかと言ったらそうじゃないんですよね。ありのまま生きてくことが人生の醍醐味。

それはもう一人のメインキャラ、職場のボスにもいえて。歳の割に色々と恋人がいて、自分の股間を機械で制御する手術を受けてしまったほどの男。これもまた「若さへの執着」の亜種ですが、『銃を撃ってる時は男って感じがする』とか、職場での態度、恋人への接し方どれを見ても基本的に【古い価値観】を絵に描いたような存在で、痛烈に皮肉ってましたね。その趣味である射撃場で事故が起きて、『電子ペ⚪︎ス』が故障する。アランたちのまえで何を言い出すんだって思った下品な話が想像以上に映画のメイン要素になっててびっくりでしたよ。
直してもらうために日本に飛んで再手術するんですが、日本人キャストが日本語で喋ってて笑った。IMDbで調べるとキャスト出てきますが、フランスで活躍されている方々のようです。まあこっちは深く考えるまでもなくバッドエンドだろうな、と思いましたけど、色々とひどいオチでしたね。そりゃ機会を体に入れたらこういうことも起きるさ。しかも生きてくために絶対必要なわけじゃないし……。バカだなぁとは思うけど好きになれないタイプ笑

そんな彼の顛末を含めて、終盤の10分間はまるでダイジェストのように次から次に場面が変わっていくのがちょっと驚き。まあ3日ずつしか若返らないわけだから実際すごい年月が経ってるんでしょうけど、その度に恋人が変わるボスや、年齢が遡っていく妻マリー。そして順調に年老いてくアラン。隙をついて穴を通れなくしようとしたり、それを見つけて怒るマリーっていう図が切なかったです。

予告動画でもちらっと写ってますが、アリというのが若干グロ注意でして。効果を確かめるために腐ったリンゴを持って穴へ→元通りって実験をした時に、食べてみたら中身がアリだらけってシーンがあるんです。もしかして人体も表面がそういう風になっているのか?ことも頭をよぎる二人ですが、確かめてみるわけにもいかず。傷口から……ってのは果たしてマリーが見た幻覚なのか、それとも。個人的にゾワゾワして気持ち悪かったです。

衰えないように筋トレとか、より肌を若くするための製品はまだしも「行きすぎた若さへの執着」はいいことないよな。でも数回くらいだったら通ってみたいかな?とか考えさせられましたが、基本的にはサクッとみれる悲喜劇ですので怖いもの見たさとしてもぜひ。とりあえず監督の他の作品見たくなるくらいにはかなり印象に残る映画でした。
「タバコは咳の原因です」とかいう戦隊パロディ映画もとても気になる。

ちなみに原題は「信じれないだろうけど本当の話」。まさしくそんな感じでしたね。

WOWOWにて字幕版を録画、視聴。

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