ロストケア / 献身的な介護で人気だった男のもう一つの顔。それは「救い」と称して高齢者を殺すことだった。検事が真相を明らかにする中で、彼の身に起きた悲しい物語が判明し。心揺さぶる重すぎる小説を松山ケンイチ&長澤まさみ主演で実写化。

葉真中顕による日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を、松山ケンイチ&長澤まさみ主演で実写化(初共演)、高齢者連続不審死事件とその容疑者としてあがった介護士への捜査を通じて、介護そのものに対する非常な現実を描き出す、心揺さぶられるドラマ。『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』などの前田哲がメガホンをとる。
高齢者がひとりで暮らす民家にて、その当人と彼が依頼していた訪問介護サービスの人間ふたりの遺体が発見されて捜査が行われるが、容疑者として同じ会社で働く介護士・斯波が注目される。誰がみても献身的に働き、家族や同僚たちからも信頼が厚かったが、よくよく調べると同様の高齢者不審死の数が異様にたかく、いずれも斯波が休みの日に起きていた。検事による追求を受けた結果、「救った」と自白する斯波。若くして白髪になった彼の壮絶な反省とは。誰もの身にもありえる「親の介護」を扱う、涙なしには見れない
柄本明、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、藤田弓子、綾戸智恵ら共演。
あらすじ
ある民家で老人と介護士の死体が発見され、死亡した介護士と同じ訪問介護センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)が捜査線上に浮かぶ。彼は献身的な介護士として利用者家族からの評判も良かったが、検事の大友秀美(長澤まさみ)は斯波が勤める施設で老人の死亡率が異様に高いことに気付く。そこで何が起きているのか、真相を明らかにすべく奔走する彼女に、斯波は老人たちを殺したのではなく救ったのだと主張する。彼の言説を前に、大友は動揺する。(シネマ・トゥデイより)

人によってはショッキングかもしれないので閲覧注意。

いやーエグい作品。なにかこう殺人シーンがグロすぎるとかそういうわけではないんだけど、めちゃくちゃ重くて、正直ちょっと最後まで見れるか不安になるレベルでした。特に介護や、そこまでいかなくても高齢者との生活を経験したことある人間にとっては色々と重なったり重だしたりしてきついものがあると思います。
上記予告動画のサムネイルにもなってますが、基本的に斯波が淡々としててめっちゃ怖いんですよね。「僕がやったのは救いですよ」ってこれだけ聞くとなんかこうありがちなサイコパス設定ぽくもあるんだけど、ここに至る思考が現実の地続きであるというか。どこかで【共感しかけそうになる】怖さがる。絶対にこの人の考え方は肯定しちゃいけないし、褒めちゃいけないんだけど。劇中でも言及されるとおり、いわゆる『介護殺人』てのはたびたび起きてしまうわけで。

最初こそ、綾戸智恵さん演じるキャラクターで「身寄りのない高齢者は事件起こして刑務所で暮らした方が楽」みたいな冗談めかしたガチのやりとりがあったり、めちゃくちゃ親身になって介護に当たっている斯波の姿が描かれるからまだ気楽にみてられるんだけど。検察側の、数学につよい子が不審な点をきっちりデータ出してきたあたりから一気にシリアスが加速していく。
斯波に仕事を押し付けて飲みにでかけた上司=強盗の犯人=被害者についても、自動販売機のシーンで小銭と一緒に複数の鍵が映るので、結構序盤から「こいつ合鍵作って忍び込んでる?」って伏線はってるのもうまいと思ったし、斯波と対照的に適度にドライに職務と向き合ってるおばちゃん同僚もいい意味でリアルだった。あんまりにもいい人すぎたりのめり込みすぎると自分がつぶれちゃうんですよね、こういう職種って。

予告でラスト15分って強調されていますが、個人的にはある程度予測済みというかびっくりとかではない。ただ、そこに至るまでに描かれてきた、斯波本人の「親の介護」のエピソードが壮絶だったので、やっぱり一番きつかった。「介護者も要介護者もふたりとも、1日3食がままならなくなる」て表現の切れ味。もうまとな生活ができなくなっていく。斯波の担当家庭のシーンで「お前は誰だ」っていったり、自分のした排泄物を食べてしまったりとか。書いてるだけで辛い。自分の親がだんだん人間として見えなくなってくる。
それを、柄本明さん演じる斯波の父の立場でも出すからね。どんだけ人の心をえぐれば気が済むんだこの映画はって思う。世話になるほうだって辛いっていうね。演技力もあいまってめちゃくちゃきつかったので覚悟してみてください。
藤田弓子さんがさらっと「トイレ介助なんて娘にさせられないわよ」って言うシーンがあるけどさ、すぎで認知症になってるひとなんか居ないんだよ。

その検事と親とのエピソードもね、いいお給料でいい施設に入れられてる母親と、対照的な父親。これそれぞれの家庭環境の格差とかも感じられて切なかった。そもそも斯波が自治体にSOS出した時にもっと手を差し伸べてもらっていたら……みたいな問題もあるし、辛いけどこういうことが現実にあるんだよってつきつけてくる感じ。

ちょっと救いがあるなと思ったのが、法廷で戸田菜穂さんが「人殺し!父ちゃん返して」って叫ぶシーン。劇中で斯波の行為を肯定しなかったのが良かった。これをアリにしてしまったらダメなんだ。彼の身に起きたことは悲劇だし同情も共感もするけど、犯罪は犯罪。でもみてる方はそこまでシンプルに割り切れない。しばらく頭から離れなくて、口直し(?)に明るい映画を見ました。

斯波の同僚として彼に憧れていたっぽい若い女性、事件のことを知ってパニック起こしたところまではわかるけど、それで福祉にトラウマできたのか、性風俗店にいるって描写が流れたのはちょっとモヤっとしたかな。別の職業でも良かったんでは?って思う。なんというかその2択しかないわけじゃないのに〜って感じちゃった。

なんども書いてますが、人によってはきつい思い出を刺激されたり、またこの映画自体の印象がしばらく残ってしまうほど心をゆさぶる作品ではありますのでご注意を。ただものすごく泣けるし、こういう現実があるって意味ではすごく意味がある作品なので、ご紹介しました。

WOWOWにて録画、視聴。
24年9月現在、アマプラでも会員見放題対象です。

B0C693MR3J
ロストケア [Blu-ray]

動画はこちら
https://amzn.to/3MAwQFi

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック