ボイリング・ポイント/沸騰 / ロンドンの人気レストランの一夜を舞台に、次々に起きるトラブルを脅威の90分ワンショットで撮影した群像劇。衛生管理検査、プロポーズの客、仕込み忘れ、インフルエンサーのわがまま、そしてアレルギー。クセのあるスタッフたちは……。

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ロンドンのレストランの一夜を、90分間ワンカット長回しで撮影した群像劇。監督はフィリップ・バランティーニ。主演は制作総指揮にも名を連ねるスティーヴン・グレアム。第75回英国アカデミー賞にて主演男優賞、キャスティング賞、英国作品賞、新人賞の5部門でノミネート。一癖も二癖もあるスタッフ。次々に起きるトラブルにレストランは沸騰寸前。
クリスマスを控えるロンドンの人気高級レストラン。オーナーのアンディは少し遅れて到着するが、その日は衛生管理審査の日。いつもならできていることや新人の教育不足でランクを大きく下げられてしまう。ただでさえ忙しいというのに過去に同僚だったライバルシェフが評論家を連れてやってきたり、サプライズでのプロポーズを計画する客などいつも以上にてんわやんわの店。トラブルが起きてしまい……。
ヴィネット・ロビンソン、ジェイソン・フレミング、レイ・パンサキ、ハンナ・ウォルターズら共演。
あらすじ
1年で最もにぎわうクリスマス前の金曜。ロンドンの人気高級レストランのオーナーシェフ・アンディは、衛生管理検査で店の評価を大きく下げられ、落ち込むことに。ようやく気を取り直して開店したものの、予約過多の客への応対や注文の料理に追われて、店のスタッフは皆てんてこ舞いの忙しさとなり、互いに一触即発の状態に。そこへアンディのライバルシェフや有名なグルメ評論家が不意に来店し、店内の空気はさらに緊張感を増す。(WOWOW番組案内より)


いやーすごい映画だった。なんかドキュメンタリー風だな、って見始めたら途中で「もしや?」って思って、調べたらびっくり。強調している通り90分全て長回しのワンカットで撮影されています。もともともっと短かったのを、同じ主演で長編映画化したそうなのですが集中力がすごいですよね。別に「撮影者の存在が感じられる」のではなくて、一つの場面を映してたと思ったらそのままカメラが移動して別の人にスポットを当てる、というのが完全にシームレスに移行してくので、舞台となるレストラン全体がよりリアルに実感できる。遅刻ばかりの仕込み担当?がゴミ捨てついでにドラックの売買してるシーンとかまで一緒についていくからね。いやいやお店忙しいのに何やってるのよあなた!ってツッコミ入れつつのめり込んじゃう。人気のない場所から、また騒がしい店に戻ってくるのがこっちまで伝わってきます。

群像劇なのでその彼の他にほとんど全てのスタッフが映るわけですが、半数以上はくせもの揃いなのでもう半ば引いちゃうんですが、見ている分にはすごく面白い。いつも長袖の気弱な青年が抱える秘密。まあ腕を隠す理由はなんとなく察するんですが、それを初めて知ったベテランおばちゃんが同情して泣いちゃってハグし合うのとか、泣けると同時に「今なのか」って笑えてくるし、父親から任されている支配人?の若い女性があんまり仕事できないしそのことでみんなから嫌われてるのが切ない。「お前の脳は腐ってる」って言われてたり、トイレで一人で泣いちゃってたりとかね。そのあと「飲みに行かない?」ってスタッフにご機嫌取るようになってて面白かったし。

トラブルの一つにインフルエンサーからの「メニューにない注文」ってのがあって、店の誇りとか考えたら断るべきだろって僕は思いましたけどね。今やネットの口コミとかで一転して変わっちゃうご時世だから気持ちよく帰ってもらうのも大事だし。一方で主人公のライバルシェフがある野望のためにわざわざ評論家を連れてきて、あれこれdisりながら食べてるのもなんとも言えないむかつき(笑)ちょとドルフラングレンみたいな顔してるこの人嫌いだったけど、さすがに経営とかお客への対応とかはめっちゃ冷静だった。罪をなすりつけようとするのはいただけないけど。

まあ一番のクズは主人公のアンディで「なんかいつも飲んでるよなぁ」って思うし、耳が真っ赤。これも察しますよね。アル中。息子との関係とかはこの手の作品にはありがちだとしても仕込みを忘れたりミスばかり。こんなんでよく許すなって思うし、だからこそ映画の中でその不満が爆発する。責められるシーンはついにきたか!っていう謎の気持ちよさがありました。腕は一流なのかもしれないけどここまで問題があると遅かれ早かれ限界がくると思う。

非常にわかりやすい伏線としてあった「ナッツアレルギー」がああいう形で回収されるのは僕も気づけなくて、原因が分かった時は「ああ〜!」って声出ちゃった。すぐ病院運ばれたし無事に回復したとは思いますけど一応発作が起きるシーンはありますのであらかじめご注意を。せっかくの夜なのに……。あの人大丈なの?ってお客さんが心配する様子とかまですごく距離が近いので、自分もこの店にいるみたいな錯覚を起こします。

最後どうやって着地するのかと思ったら……。正直ハッピーエンドはないだろうなって予感もあったのですが、なかなか衝撃的な展開。同じダメ人間でもあんまり主人公に共感するタイプの作品ではないので最後までアンディには振り回された感じがします。

ちなみに映画の続編としてBBCにて全5話のドラマシリーズが計画中だとか。結構すごいところで終わるのでチャンスがあればぜひ見てみたいです。

長回しっていう特徴のおかげで臨場感が半端ないですし、ドタバタっぷり、カオスっぷりに引き込まれる作品。大丈夫かよこいつっていうツッコミを入れながらぜひ楽しんでほしいです。

WOWOWにて吹き替え版を録画、視聴。


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