もとは暴力団にも所属し、襲ってきた敵を撃退したことで殺してしまった罪によって長い刑務所生活を余儀なくされた三上。久しぶりの社会生活になかなか馴染めずにいると、彼のことを取材したいというテレビマンが訪ねてくる。小さい頃に別れたきりの自分の母親探しにもつながるといわれ承諾するが、三上は職探しから壁が立ちはだかり……。
テレビマンに仲野太賀、身元引受人に橋爪功のほか、六角精児、北村有起哉など豪華共演。
あらすじ
下町で暮らす短気な性格の三上(役所広司)は、強面の外見とは裏腹に、困っている人を放っておけない優しい一面も持っていた。過去に殺人を犯し、人生のほとんどを刑務所の中で過ごしてきた彼は、何とかまっとうに生きようともがき苦しむ。そんな三上に目をつけた、テレビマンの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は、彼に取り入って彼をネタにしようと考えていた。(シネマ・トゥデイより)
冒頭でも「切ない」ってワードを使ったので察してもらえるとおもいますが、これかなりシリアスで重い作品なので見終わった後どっと疲れました。題材的に新しい人生の一歩、人とのつながりを得て再出発、みたいなハートフルなイメージで見るとなかなかきつい。もちろんそういう要素も多分にあってグッとくるシーンいっぱいありましたし、コミカルな演出もあるんですが、基本的には三上の「生きるのに不器用なさま」がまざまざと見せられるので、応援して感情移入すればするほどなんともいえない辛さがある。
実写化にあたって舞台を現代にうつしてたり、「身分帳」という原作のタイトルから変更してるのでとてもすんなり物語に入れますし、「受刑者の社会復帰」というのはおそらくなくなることのないテーマだと思うのでそこのハードルは低いのですが、いかんせん三上が非常に短気なので、「たのむから問題起こすなよ」って気持ちだとか、「なんでこんなに親身になってる人に逆ギレするの!」って苛立ちも出てきちゃう。六角さん演じるスーパー店長の『今日は虫のいどころが悪いみたいだね』っていう対応が大人すぎて……。
そういうふうに簡単にいかないからこその感動と言いますか、どんどん肩入れしていって下手すれば息子か(言い過ぎ)ってくらい距離が近くなるテレビマン、最初に色々と面倒見てくれる身元引受人夫婦、今触れたスーパーの店長、生活保護の手続きしてくれる役所の人などなど周りの人たちがそんな彼を見捨てずに、一歩一歩すすんでいくところが泣けるんですよね。これは文句なしの「すばらしき世界」だと思う。
ただ喧嘩の仲裁に入ったあげくチンピラをボコボコにしてしまってからの流れが面白すぎた。「軽い気持ちで取材したけどやっぱりヤベェやつだ!」って全力ダッシュで逃げる太賀くん(笑)そこからまたよくあの信頼関係になったよなぁ。
あと周りの人で印象的だったのはやっぱり出所してきてすき焼き食べるシーンね。あの部分だけで10秒で泣ける。
中盤くらいになると色々と不運が重なっってしまい、孤独を感じた三上が組を頼ってしまう。ここもね、「バカなにしてるんだよ!」って腹立ちました。(性風俗店のシーン・ヌードが出てきますのでご注意)でもそこでのヤクザの現実を突きつけららたときの哀愁。木村ミドリ子さん扮する姉御の「今なら戻れる」って言葉で引き返せたのも良い。あれは支えてくれた人との思い出があったからですよね。出所していきなりこの流れだったらもっと後先考えずに行動してたんじゃないかな。
終盤に出てくる「介護職編」については、色々な事情を抱えた人にも手を差し伸べる職場もある、っていい話の一方でいじめ問題とか出てきてここも辛い。三上の搾り出すような『似てますね』はトラブルを起こさないように成長した反面、仲間を見捨てる決断でほんとキツかった。どうすればいいのかな。そしてそこからの怒涛の展開。こうなると「すばらしき世界」が皮肉めいて見えてくるという……。
すごく切ないけど、これに近い現実というのは確実にあるわけで。僕らひとりがどうすればいいってことじゃないんですが、いつまでも頭の中に残るお話だったと思います。また出てる人たちがすごく上手いからね、余計にリアルすぎてきついんだよなぁ。急にキレるところとかね。
底抜けに明るい作品みて口直ししないとなかなかきつい映画でした。
WOWOWにて録画、U-NEXTにて視聴。
25年2月現在、アマプラでも見放題対象のようです
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